住環境の設定|敷地検討用に周辺建物を3D化|SketchUpFree

このシリーズでは、間取りシミュレーションにSketchUp Free(無料版スケッチアップ)を活用する方法やアイデアを集中掲載していきます。
注文住宅を検討中で、敷地運用から間取りプラン~外観デザインに至るまで、パソコンで考えてみたい!という方におすすめです。
注文住宅のシミュレーションをする際、お隣や道路からの視線、日当たり、風通し、建物の圧迫感、生活音、防犯性など、間取りに大きく影響する周辺環境のことも気になりますよね。
こうした住環境をできるだけリアルにシミュレーションしたい方には、SketchUp Free(無料版スケッチアップ)の活用がおすすめです。
周囲の建物や敷地の形状を簡易的に3Dで再現し、視線や影の落ち方、距離感などを視覚的に確認できます。
ただし、SketchUp Freeは有料版(Pro)と違って、建物や地形の3Dモデルを直接インポートすることはできません。
そこで今回は、無料版でも周辺建物を手作業で簡易的に3D化する方法について紹介します。
具体的には、
・オンライン地図のスクリーンショットを取り込み
・建物をトレースして立体化する
という手順で進めていきます。
「どこに視線が抜けるか?」「どこに日陰ができるか?」「どこに目隠しが必要か?」
暮らしの質に関わるヒントを3Dで可視化してみたい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
簡素な3Dモデルを自分で作るということにご留意ください。
オンライン地図からは近隣建物の正確なサイズを知ることはできません。写真や土地区画からわかる、おおよそのサイズで、簡易的に3Dモデリングしていきます。
前提条件
・SketchUpの初歩的な3D描画スキル。
・正確な敷地形状を作成済み。
・隣地の区画や道路の形状なども作成済み。
・敷地の方位合わせができている。
【関連記事】
敷地形状の作り方:SketchUp Freeで敷地や土地区画をトレース入力する
敷地の方位合わせ:住環境の設定|敷地の方位とマス目の配置|SketchUpFree
オンライン地図を取り込んで等倍にする
こちらの敷地モデルにオンライン地図の画像を合わせて、建物をトレース入力します。

その前にマップの画像データを先に作っておきます。
マップの画像データを作る
オンライン地図は建物の形がだいたい把握できれば何でもよいです。ここではgoogleマップを使います。
googleマップで使いたい場所を表示して、スクリーンショット→画像データ(jpgまたはpng形式)にします。

・prt scrキーでスクリーンショットをとる
・付属のペイントツールを開いて貼り付け
・必要な範囲を選択-切り取りしてpng形式で保存
画像を保存したら、次はスケッチアップです。
SketchUp Freeに画像インポート



画像サイズを等倍に調整
このイメージを、次の手順で等倍(実サイズ)に縮尺変更します。
💡半透明にすると見やすくなる
この時、X線モード(半透明)にしておくと、重なった図形が見やすくなります。
[Shift+/]キーでコマンド検索を出し、 Xキーを入力するとX線のON/OFFメニューが現れます。
①イメージ上で、区画の形が分かりやすい場所の距離をメジャーツールで測る。

②敷地図形の同じ場所を測定する

イメージの方が9737、敷地図形の方が6586で、6586÷9737=0.6764
イメージは敷地図形の0.6764倍であることが分かりました。
③尺度ツールでイメージを縮尺変更する
イメージを0.6764倍します。
尺度ツール(Sキー)でイメージを選択して、キーボードから尺度を入力します。

④移動ツールと回転ツールで、イメージを敷地図形に合わせて置く
移動ツール(Mキー)でイメージを移動させる。

回転ツール(Qキー)でイメージを回転させる。


これで周辺建物参考用イメージの配置ができました。
イメージはタグで表示/非表示の切り替えができるようにしておくと便利です。

イメージの大きさが合わない場合は、さらに尺度ツールで比率を微調整して合わせますが、オンライン写真はあくまでも目安です。完璧なサイズ合わせまでこだわらなくてよいです。
トレースで建物の平面を作る
冒頭でも説明したとおり、写真で見える建物をもとに、おおよその位置をトレースします。
おおよそとはいえ、一応あたりはつけて入力します。
日本の建築物は一般的に910mmを一マスとした規格でつくられていることが多いです。これを前提として910マス目を写真に重ねて建物の広さ部分と思われる場所をトレースします。
トレースには前回記事で使った910マス目も使います。
このマス目を周辺区画へ移動させて、長方形ツール(Rキー)で建物広さを描画します。

建物図形の作成ポイント
・910mmを1マスとして、写真からおおよその位置へ四角形を入力
・四角形はグループ化しておく
・図形に「周辺建物」など、わかりやすいタグをつけておくと便利
ここではこの様な感じで周辺建物の平面図形を準備しました。

次はこれを立体化します。
建物を簡易的に立体化する
先ほど作った建物形状をプッシュプルツール(Pキー)で立体化します。
周辺建物は2階建てということしかわかりません。
日本の一般的な2階建て住宅の高さは6~9メートル程度とされています。
ここでは7mとしておきます。

[補足]建物各部の平均的高さについて
一般的に普及している戸建て建築の、各部の平均的とされているサイズは次の通りです。
・1F床高:450mm以上(建築基準法による)
・天井高:2200~2600mm(2100以上で、部屋の用途や生活スタイルで異なる)
・階高:2800~3000mm(天井高に加え、床の厚みや天井裏の設備スペースを含めた高さ)

2階建て住宅の場合、階高が2層分あり、これに屋根の形状による高さが加わることで、建物全体の高さが決まります。
屋根の形状は、建築基準法による道路斜線制限や高さ制限などの法的制約、あるいは構造設計によって変わるため、一概に一定とは言えません。
ただし、上記の要素をふまえ、本記事では一般的な2階建て住宅の建物の最も高い部分を約7mと見なしています。
窓の位置や建物形状はストリートビューを参考にする
間取りの検討材料として、建物形状や窓の配置などザックリでもよいので表現したいところです。この場合はgoogleマップやストリートビューの写真から、わかる範囲で形を整えます。
ここでは3Dモデルを加工するポイントを紹介していきます。
建物形状を加工する
【建物構造】
プッシュプルツールを使うと建物の出っ張り(下屋など)や、引っ込み(アルコーブ、中庭など)を簡単に表現できます。


【屋根形状】
移動ツールの変形のテクニックを使うと簡易的に屋根を作れます。
💡屋根形状を作るときのポイント
・直線ツールで天井部に屋根形状の直線を引く
・変形させたい直線を、移動ツールでつかんで垂直に持ち上げる
(移動の時、↑キーで垂直方向に固定できる)
切妻
天井に一本線を引いて、その線を垂直に持ち上げる。

方形
天井に対角線を引いて、その交点をつかんで持ち上げる。

寄棟
天井に>―<の図形を直線で描いて、真ん中の線だけをつかんで持ち上げる。

片流れ
天井の端っこの直線をつかんで持ち上げる。

窓を配置する
ストリートビューで確認できる大体の場所へ、長方形ツールなどを使って窓を書き入れます。
この時、メジャーツールのガイド線を、各階のフロアの高さ*と思われるところへ引いておくと高さの目安になって便利です。
*前述の「[補足]建物各部の平均的高さについて」の項を参照

隣の窓からの視点
近隣建物の窓から自分の敷地がどう見えるか?シミュレーションをしたい場合は、窓の面だけDelキーで削除し、視点を建物内に置いてピボットツールで見回すことができます。


ザックリではありますが、こんな感じで近隣居住者の視点も再現することもできます。
周囲からの視点のほかにも、日当たり、建物の圧迫感などなど、SketchUp Freeを使って3Dで確認できることはほかにもいろいろあります。
周辺建物の3D化で検討しておきたいポイント
注文住宅の間取りを検討する際、隣地の建物や周辺の地形といった外部環境は制約としてとらえがちですが、住まいの快適性、機能性、デザイン性などを高める良い機会でもあります。
SketchUp Freeで敷地周辺の住環境を再現すれば、これが間取りプランにどう影響するかを視覚的に検討することができます。
以下に、SketchUp Freeで周辺環境を3D化して検討しておきたいポイントをまとめておきます。
視線とプライバシーの確保
・隣家の窓や庭の位置:隣家の窓や庭に立った、近隣居住者の視点。
・道路の位置:歩道からの視点、車からの視点(特にトラックやバスなど背の高い車両)
敷地外のそれぞれの視点にカメラツールを置いて、自分の敷地がどう見えるか?プライベート空間のどこまで視線が届くか?。敷地の目隠し(壁やフェンス)の3Dモデルを作って、どの程度の高さが必要か検討することができる。
眺望・借景の検討
・屋内からの眺望:居室の窓からの見晴らし。ソファやキッチンから庭や敷地外への視線の抜け。
・借景の活用:近景(隣地の立派な木、涼しげな夏の田園など)や、遠景(野山などの自然)の見え方。
室内にカメラツールを置いて、窓から景色がどう見えるか?屋外の良い景色に視線が抜けているか?開口(窓)の位置やサイズの調整・検討。周囲のロケーションが好ましくない場合は中庭を検討するなど。
風景写真を使いたい場合はイメージのインポート機能がおすすめ。樹木の3Dモデルは3Dライブラリ(3DWarehouse)で検索。大規模な実サイズの地形モデルをインポートして遠景に使うこともできる→(関連記事)SketchUp Freeで立体的な地形を取り込んでみる
日当たり(影の変化)の検討
・日当たりの変化:隣家などの周辺建物、山や土手などの地形に日光がどのように遮られるか。
・採光の計画:窓からの光の差し込み方、周辺建物など障害物の隙間からの差し込み方。
「場所の追加」機能で、モデルに位置情報をあたえると正確な日影シミュレーションができる。日付と時間のスライダーを動かして、日射(影)の変化をリアルタイムで確認できる。
車の出入り・駐車計画
・駐車スペースの確保:車の3Dモデルを置いて長さや幅の確認。ドアの開閉スペースは十分か。
・旋回経路の確認:車の最小回転半径はカバーできているか。切り返しは必要になるか。
3Dライブラリ(3DWarehouse)からダウンロードした車の3Dモデルを使って、駐車スペースの検討が可能。市販車の最小回転半径を確認したい場合は、インターネット検索で「〇〇 最小回転半径」で数値を調べ、円弧ツールなどで回転半径を描画して道路と駐車場の位置関係を検討できる。
まとめ
注文住宅を計画するうえで、敷地そのものだけでなく、周辺環境も含めて立体的に把握することはとても大切です。SketchUp Freeを活用すれば、近隣建物や道路を簡易的に3D化し、視覚的に住環境を検討できます。
自分で3Dモデリングすることで、次のような暮らしに直結するポイントが見えてきます。
- 視線とプライバシーの確認
隣家の窓や道路からの視線を考慮し、目隠しの必要性を判断できる - 眺望・借景の検討
室内からの見晴らしや、自然の景色をどう取り込めるかが見えてくる - 日当たり(影)の変化の把握
時間帯や季節ごとの採光の違いをリアルタイムで確認できる - 車の出入り・駐車スペースの計画
車の動線や旋回半径も3Dで視覚的にチェックできる
この他にも、SketchUp Freeを活用すればアイデアしだいで様々なシミュレーションを試すことができます。
この記事が皆さんの理想の住まいを形にするヒントなれば幸いです!
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