住環境の設定|建物の広さや床面積を出す|SketchUp Free

このシリーズでは、間取りシミュレーションにSketchUp Free(無料版スケッチアップ)を活用する方法やアイデアを集中掲載していきます。
注文住宅を検討中で、敷地運用から間取りプラン~外観デザインに至るまで、パソコンで考えてみたい!という方におすすめです。

家づくりで間取りを考えるのは、夢が広がってとてもワクワクする時間です。

しかし、敷地に対して建てられる建物の大きさは「建ぺい率」によって制限されています。自分たちでじっくり練った間取りプランを工務店に持って行ったとき、「この広さでは建てられません」と言われてしまうことも…。

間取りを自分で考えるなら、あらかじめ自分の土地で「どれくらいの大きさの建物が建てられるか」を把握しておくことがとても大切です。

この記事では、以下のような方に向けて、「建ぺい率」「容積率」に合った建物サイズをSketchUp Freeを使って視覚的に確認する方法をご紹介します。

  • 敷地に対して建てられる広さをざっくりでも把握したい方
  • 自分で間取りの枠を考えたい方
  • パソコン上で建物の広さや面積を直感的に確かめたい方

「この広さで何LDKならいけそう?」といった感覚的な疑問も、SketchUp Freeを使えばかたちと面積で見える化できます。

間取りシミュレーションの第一歩として、ぜひ参考にしてみてください。

前提条件
・SketchUpの初歩的な3D描画スキル。
・敷地の広さ、建ぺい率、容積率が分かっている。
・正確な敷地形状が作成済み。
・910マス目の準備。

敷地形状の作り方:SketchUp Freeで敷地や土地区画をトレース入力する
910マス目の準備:住環境の設定|敷地の方位とマス目の配置|SketchUpFree

建ぺい率・容積率からわかる「使える面積」

間取りシミュレーションでまず最初に重要になることが「建築面積」と「延べ床面積」です。いくら素敵な間取りを考えても、この面積の上限を超えてしまえば、工務店さんに「この広さでは建てられません…」と言われてしまいます。

建築面積:建物を真上から見た地盤部分の水平投影面積。
延べ床面積:建物のすべての階の床面積を合計したもの。

これらの面積は、敷地面積建ぺい率容積率、が分かれば自分で計算できます。
計算式は次の通りです。

建築面積 = 敷地面積 × 建ぺい率(%) ÷ 100
延べ床面積 = 敷地面積 × 容積率(%) ÷ 100

例えば、次のような条件があるとします。

敷地面積:100㎡
建ぺい率:60%
容積率:120%

上の計算式に当てはめると、

建築面積:60㎡ = 100㎡ × 60 ÷ 100
延べ床面積:120㎡ = 100㎡ × 120 ÷ 100

この土地で使える面積の上限は、建築面積60㎡延べ床面積120㎡となります。

それでは実際にSketchUpのモデルで、建築面積の上限を出して、間取りの枠の大きさを視覚化するところまで、やってみましょう。

SketchUp Freeで敷地形状を準備する

冒頭で書いた通り、正確な敷地形状がすでにモデリングされている前提で説明します。

今回、このような敷地のモデルを使います。

青いエリアが敷地部分です。測量図などから正確にモデリングしていることが前提です。
青いエリアが敷地部分です。測量図などから正確にモデリングしていることが前提です。

敷地形状の作り方はこちらを参考にしてください:
SketchUp Freeで敷地や土地区画をトレース入力する

また、間取りを検討するのに便利な910マス目も準備します。

910マス目を敷地に重ねて使う
910マス目を敷地に重ねて使う

この910マス目は、画面右の3Dライブラリで「910グリッド」で検索するとダウンロードできます。(当サイトのコンテンツです)

910マス目の使い方はこちらの記事も参考にしてください:
住環境の設定|敷地の方位とマス目の配置|SketchUpFree

💡910マス目で間取りプランニングをスムーズに
日本の住宅設計では、柱と柱の間隔などに用いられる基本モジュールとして910mmが広く採用されています。これを基準にしたマス目をSketchUp上に敷いておくことで、部屋の大きさ、建具の配置などが感覚的に掴みやすくなります。寸法の目安が自然と把握できるため、専門家でなくてもプランを検討しやすく、使える面積を確認しながらスムーズに進められます。

建てられる広さを視覚化する(建築面積)

こちらの敷地の条件を、仮に次の通りとしましょう。
・敷地面積:145.4㎡
・建ぺい率:60%
・容積率:110%

建築面積の計算式を使うと

建築面積:87.24㎡ = 145.4㎡ × 60 ÷ 100

この土地に建てられる建物の広さは87.24㎡以内でなければいけません。

87.24㎡とはどれくらいの大きさでしょう?正方形で視覚化してみます。
この平方根(ルート)を電卓で計算して、一辺が9.34mの正方形をここへ描きこみます。

長方形ツールを使って正方形を描きこむ
長方形ツールを使って正方形を描きこむ

面を右クリック ➡ エンティティ情報 で面積を確認すると 87.24㎡ であることが分かります。

910マス目を目安にする場合は、縦横が約10マス分です。

これが建築できる面積、超えてはいけない間取りの枠です。

床面積を視覚化して積み上げる(延べ床面積)

延べ床面積も同じ要領で視覚化します。

・敷地面積:145.4㎡
・建ぺい率:60%
・容積率:110%

という条件から、延べ床面積は

延べ床面積:159.94㎡ = 145.4㎡ × 110 ÷ 100

この土地で建てられる床面積の合計は 159.94㎡ 以内でなければなりません。

1Fの床面積を 87.24㎡ すべて使うとします。(建築面積を目一杯つかう)
すると、2Fは159.94 – 87.24 = 72.7㎡ まで使えます。

72.7㎡を同じように正方形で視覚化してみましょう。

同じ要領で2Fの床面積を正方形で視覚化
同じ要領で2Fの床面積を正方形で視覚化

72.7㎡とはこのような大きさで、マス目でみると縦横が約9マス分です。

この二つの面を選択ツールで選択して 面を右クリック ➡ エンティティ情報 すると、選択した面の合計面積がが表示されます。

エンティティ情報の右上に面積の合計値が表示される
エンティティ情報の右上に面積の合計値が表示される

2つの面の合計は、先ほど計算した159.94㎡ と同じになっていることが分かります。こうすることで延べ床面積の上限を確認することが簡単にできます。

これで1Fと2Fの「使える面積」の視覚化ができました。

面積チェックの操作ポイント
選択ツールで合計したい面を選択(エッジなど余計なものを選択しないように注意)
・右クリック → エンティティ情報
・画面右上のエンティティ情報パネルで面積を確認

使える面積、間取りの枠が決まったら、いよいよお楽しみのプランニングです。
SketchUpは自由度の高い3Dモデリングソフトウェアです。家具や設備をダウンロードしたり、簡単な形状なら自分で作ったり。自由自在に間取り検討を楽しめます。

SketchUp Freeで楽しむ間取りシミュレーションの一部です(下書き、配置検討のステップ)
SketchUp Freeで楽しむ間取りシミュレーションの一部です(下書き、配置検討のステップ)

自分で建築面積を把握することのメリットと注意点

ハウスメーカーや工務店に注文住宅を依頼するとき、自分たちの要望を伝えて間取りプランを出してもらったら、「思ったより狭いぞ…」と、理想とのギャップに軽くショックを受けることも少なくはありません。

事前に建てられる面積の目安を知っておくことで、そうしたギャップを防ぎやすくなり、プランへの納得感や自由度も高まります。

プロに任せる前に自分でイメージを固めておくことには、次のようなメリットがあります。

  • 建てられる規模が視覚的にわかる
    どれくらいの広さで建てられるか、現実的な枠組みが視覚的につかみやすくなります。
  • 間取りプランニングがスムーズに
    使える床面積の範囲を知ることで、何部屋取れるか、LDKは何畳確保できるかなど、検討がスムーズに。
  • 専門家との打ち合わせの質が上がる
    建てられる広さのイメージをあらかじめ持っていれば、プロの提案も理解しやすく、納得のいくプランへとつながります。

💡 注意点:目安であることを忘れずに
SketchUp Freeは高精度なモデリングが可能ですが、現実的な建築面積の算出には専門知識が不可欠です。操作ミスや見落としで面積上限を超えるリスクもあるため、最終的な面積の確認はプロに任せるのが安心です。

また、建ぺい率や容積率には例外や特例(バルコニー・吹き抜けの扱いなど)があるため、判断を自己完結せず、専門家に相談することをおすすめします。

SketchUp Freeを使って具体化してみることで、家づくりへの理解も深まり、より納得のいくプランへとつなげることができます。

まとめ:建てられる広さを把握することが、納得の家づくりの第一歩

家づくりでは、間取りを自由に考える楽しさがありますが、その一方で「どれだけの広さの家が建てられるか」という現実的な条件の把握はとても重要です。

SketchUp Freeを活用すれば、建ぺい率や容積率の上限をもとに、自分の敷地で使える建築面積や延べ床面積を視覚的に確認できます。これは、間取りの方向性を考えるうえで大きなヒントになり、設計者とのやり取りもよりスムーズになります。

もちろん、最終的な判断はプロの確認が必要ですが、「ざっくり把握する力」は施主にとっても大きな武器になります。SketchUp Freeを上手に使って、理想の住まいづくりを一歩リードしてみてください。